午前4時。
歩乃はそっと家のドアを開けた。
そしてそのまま足音を立てないようにして静かに寝室に入った。

ベッドの上には、麗也が眠っていた。

恐る恐る麗也の首筋に手を当てる歩乃。

しかし、そこにはいつもの温もりは感じられなかった。

麗也にはもう脈が無かった。

心臓も呼吸も止まっている。

もう歩乃の名を呼ぶことの無い麗也。
もう歩乃の姿を瞳に写すこともない麗也。
もう歩乃の手を優しく包み込むことも出来ない麗也。
もう歩乃を抱きしめることもない麗也。

歩乃の知っている麗也は、歩乃の依頼によっていとも容易く、儚く消えてしまった。
ふいに、歩乃の頬を一筋の涙が伝う。