それからも先輩とは校内で何度かすれ違うことがあったけれど、会話を交わしたりすることはなかった。 でも、わたしの目は今まで以上に先輩を追うようになっていた。 「あーあ。体育だるいなー。外とか寒いし」 陽子がジャージの襟を鼻の上まで持ち上げて言った。 風がすっかり冷たくなった11月上旬。今日の体育の授業はテニスで、わたしたちは屋外のテニスコートのまわりに集まっている。