「好きな女取られそうになって…冷静で居れる訳ないだろっ…!」



とうとう言ってしまった。
俺の幼馴染みである神戸製鉄の社長、堀越圭介が紗和を狙ってる。
譲れないだと?
俺の方が譲れねぇよ!
お前にだけは絶対渡さない!!



その前のネクタイを結んでくれた時の目線。
あんなの完全に意識するだろ。
混同するなって?
俺には無理な話だ。
散々気のあるフリしてんじゃねぇか。




「もて遊んじゃ……ダメですか?」



そっちから仕掛けてくるくせにいつも土壇場で引いてしまうズルい女。
掴めそうで掴めない。
すぐにでもこの手で抱きしめたいのに。
こんなに近くに居るのに。



フラフラになりながら圭介と紗和を離れさせた。
なのにエレベーターで2人きりになりやがって。
発狂しそうだった。
周りの目なんか関係ない、もうそんな余裕すらなかったんだ。



頼むから俺以外の男と一緒になんて居るな。
俺だけを見てろ。
俺だけの秘書で、俺だけの女になれ。
断る理由ないよな…?
これからのお前の時間を俺だけにくれ…!



嘘でもいいから俺の事好きだって言えよ…!



もたれ掛かりながら朦朧とする意識の中で優しく背を撫でてくれる紗和の手に安らぎを覚えてた。



自宅で見る紗和の姿はなかなかのもので、凄く嬉しいのに何で俺は倒れてんだよ。
せっかくのチャンスが台無しだと嘆く。
あんな沁みるお粥食った事ねぇよ。
何もかも合格点越えてくんじゃねぇ。