「深山、この会議が上手くまとまったら…俺とデートしろ」



ドキッとした。
耳に残る副社長の甘い声。
命令だなんてズルい。
だから言ってるじゃないですか。
そんなオプションはないって。
最初に交わした契約内容をお忘れですか?



お願いだから、困らせないでください………



たまたま発した覚えたてのフランス語が奇跡的にポール氏の足を止めて、手探り状態の会話が運良く通じて、君が通訳するなら話を聞こうと言ってもらえた。



億単位のプロジェクトは上手くまとまったしホッとしたのも束の間。
全く約束を忘れていなかった副社長にジリジリ詰め寄られている。
ていうか約束!?
してない!してない!



日に日に距離感が近くなってるし、皆の前でも堂々と接するようになってきて……やっぱりこれはマズイ。
どうにかして一線を引かないと、周りに怪しまれ始めたら余計面倒な事になる。



なのに副社長の瞳は私の動きを簡単に止めてしまう。



髪を撫でられたら……錯覚しそうになる。
ダメだ……もう目を合わせられない。
代行であると理解しながら……その次を求めてしまってる……




「今度の土曜日、俺のレンタル彼女になってくれ!」



ハッとした。
バカだな………私。
拒めば拒むほど何が見えたって言うの……?
何かに期待してた……?
その次って一体何を想像したの……?



そうよ、私は便利屋よ。
いつだって、どこだって駆けつける。
クライアントに寄り添って、出来る限りを尽くし、要望に応える。