ーHIDAKA 副社長 日高 響也 Sideー
「おい、誰だよ……アレ」
隣の 林 監査役に思わず言ってた俺は前から目が離せず動けなくなってしまっていた。
一瞬で目を奪い、時を止め、心に…体に…雷が落ちた。
「ええ…橘建設のみやまさわさんですね」
チラリと資料に視線を移すと初めて見る名前、〈深山 紗和〉と記されている。
そのままどれほどの時間、彼女を眺めていただろう。
瞬きひとつ見惚れてしまう、凛とした存在感、仕草、声……全てがパーフェクト。
まさに、どストライクな女………
橘建設にこんな社員…いつから居たんだよ。
決めた………
この女、俺の秘書にする。
プレゼンは群を抜いて橘建設が圧勝だった。
初めての割には受け答えもしっかりしていて知的センスが光ってる。
眼鏡をかけてたって俺は誤魔化せないぞ。
美人オーラだだ漏れじゃねぇか。
合格だ。
急用が入ったので途中退席した俺は廊下を歩きながらどうあの女と接触するか考えていた。
まさか向こうから出会い頭で現れてくれるなんて思いもよらなかったけどな。
突然ぶつかってきた彼女を抱きかかえ引き寄せた。
数メートル先ではなく間近で見る顔は更に俺の心に火をつけた訳で……
慌てて去って行く彼女に何か感じるものがあったし、秘書として自分の隣で歩く姿が安易に想像出来た。
今は急がなくとも必ずまた会える。
自慢じゃないが女に不自由した事がない俺は、この時点でもいつものように長期戦でいくつもりでいた。
いかなくても向こうから来る事もあったし遊び方には自信があった。