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イザベルと歌劇場へ行った日から三日後。

日課である家庭教師の授業を終えたセシリアは、お茶の時間になるまで、自室で侍女たちと密談中である。

セシリアを真ん中にして、長椅子に三人横並びに座れば、ギュウギュウだ。

テーブルを挟んだ向かいには、ひとり掛けの椅子が二脚あるというのに、わざわざ狭い思いをして顔を寄せ合い、ヒソヒソと悪巧みをしていた。


ツルリーが次のターゲットを、王城の料理人にしてはどうかと提案する。


「何百人分もの料理ですから、下拵えはかなり早めにするらしいですよ。調理開始まで余裕があれば、別室で休憩するようです。その間に厨房に忍び込んで、下拵え済みの食材を駄目にしちゃえばいいと思います!」


せっかくの提案だが、セシリアは渋い顔をして乗り気ではない。


「食べ物を粗末にしてはいけないと、子供の頃、母方のおばあ様によく言われたわ。だから、食材を盗んで貧しい者たちに配るのはどうかしら?」


それに対して、今度はカメリーが強い拒否を示す。


「それを実行すれば、王族の皆様はともかく、私たちや使用人は確実に一食抜くことになります。三食支給は侍女勤めの報酬に含まれているのに、損をするのは絶対に嫌です」