テストが終了し、速やかに答案を回収して『ペインター』先生が教室を出て行った直後。

終業のチャイムが鳴ると同時に、杉浦はクラスメートを集めて何やら会合を始めた。


「おい……アイツらは一体何やってんだ?」


新二が凛香に尋ねると、彼女は複雑な表情を浮かべた。


「みんなにテストの手応えを聞いて、少しでも情報を集めようとしてるんだって。私も協力を頼まれたけど、新二君に不利になるようなことならしたくない、って断ったら凄く冷たい目で見られた……」

「そうか……ありがとうな」

「ううん、これくらい当たり前よ」


新二は慣れない手つきで凛香の頭を撫でてから、すぐ思案顔になる。


「しかしそうなると、凛香以外は全員敵って考えた方が良さそうだな。だがそれも大した敵じゃない」

「そうかな? 聞いた感じ、杉浦君って凄く頭が良さそうだけど……」

「いや、はっきり言ってあのインキャストーカー野郎には拍子抜けだ。テストが終わった今、いくら情報収集やら作戦会議やらしたところで何も変わらないことが分かってない。口だけ達者なハリボテ野郎だ」

「でもクラスのほぼ全員を味方に付けちゃってるよ?」

「杉浦以外の奴らに至っては烏合の衆だろ、眼中にねえ。そもそもこれは純粋な頭脳戦だ。俺がテストで勝ち続ける限り誰も逆らえない。今杉浦にペコペコしてる連中も、すぐ掌返して俺にひれ伏すさ。そうしなきゃ『処分』されるんだからな」

「ねえ、新二君……本当に新二君はこのクラスを――」


凛香が不安の滲む声で言いかけた時、


「――ねえねえ、僕もここにいるよ! ここにいるってことは、僕もりゅうくんとりんちゃんの味方なんだと思います!」