幼なじみのキミと初めて出会ったときの記憶は、正直言って、ないんだ。


ごめんね雄太(ゆうた)。


だって記憶もハッキリしないくらい、ずっと昔からあたしたちは一緒だったから。


それでも、あの日のことは鮮明に記憶しているよ。


真っ青に晴れ上がった空。


背の高い木々の枝先を覆った、目を見張るほど鮮やかな紅葉。


白い三角屋根の教会の前で、閉じられた扉の向こうから聞こえてくる、パイプオルガンの音色。


あの日は、あたしの親戚のお姉さんの結婚式だったね。


ふたりでリングボーイとフラワーガールをしたとき、あたしたちまだ幼稚園児だった。


あたしはスカートがフワッフワに広がった、真っ白なドレスを着てたんだよ。


背中の大きなリボンと、クルクルに巻いた髪に飾った花冠は淡いピンク色。


手に持った籐カゴの中には、色とりどりの花びらがたくさん入っていた。


周りの大人たちはみんなあたしのこと、『すごくかわいい』って、いっぱい褒めてくれたんだよ。


でもね、あたし、教会の前に立って出番を待ちながら、本当はすごく不安だったんだ……。