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「嘘だろう?!料理を作るのに鍋もないなんて!…君たちは僕がいない間どんな食生活を送ってきたんだい?」


ーーカナリック地方を出て数日。

国境付近の森林で、調味料を手にしたランディが呆れたように私たちを見つめていた。


「えっと…川でとった魚を焼いて食べたりキノコや木の実でお腹を膨らませてたから、ちゃんとした料理は食べてなかったわ。味がなくても、餓死するよりはマシだもの。」


「かわいそうに…」


私の言葉にそう呟いて哀れむように顔をしかめたランディ。彼が仲間に加わってから、大幅に生活の質が向上した気がする。

毎食の料理もそうだが、ランディはなにかと生活能力が高い。最悪の場合、水だけで飢えを凌ごうとするシドとは大違いである。


「あー、“元執事”ってのはいいな。この調子で洗濯も頼む。」


「…シド。“執事”と“下僕”は違うんだよ。こき使われるのは慣れてるけどさ…」


何だかんだ仲良くなった様子の彼らに、つい微笑ましくなってくすりと笑う。

そんな時、私は地図を見つめながらシドに尋ねた。


「ねぇ。次の目的地はどこなの?もうすぐ街に着く頃よね?」