「見てください、レイシアねえさま。一面、雪で真っ白です…!」


郊外の森。

夜の帳が下りる頃、落ちる日につられるように空からふわふわと舞い落ちる粉雪が修道院への帰り道に積もり始めていた。

きゅっきゅ、と靴を鳴らして雪原を歩く8歳の少年ミックは、「くしゅん!」とくしゃみをしながら赤い鼻をこすっている。


「寒いわねミック。買い出しも終わったことだし、早く修道院に帰りましょう」


「はい!それにしても、今日は予報より雪が多いですね。風邪引いちゃいます」


ここ、国の北西部に位置するベンタウン地域は有名な豪雪地帯であり、冬になると一面が銀世界となる。

そのせいか、はたまた都市部から離れているせいか人口はさほど多くないが、それ故に豊かな自然と農村に囲まれた平和な土地であった。

今は十二月。

本格的な冬に入ってきたとはいえ、今日は一段と冷えているらしい。シスターの制服の上に厚いコートを羽織っても、まだ寒さを凌げないほどだ。

これじゃあ、地面が見えないほど雪が降り積もるのも頷ける。


(あれ…?)


雪景色を眺めたその時。ぴたり、と足が止まった。

立ち止まる私を、ミックはきょとん、と見上げる。


「どうしたんです?レイシアねえさま」


そんな彼の問いかけに、無意識に言葉がこぼれた。


「赤……?」