ケータイ小説 野いちご

嫌われ王子を好きな理由

傷だらけでも




◇◇◇◇◇


「──美砂子! たいやき持ってきたよ!」


中等部の体育館裏に、場違いなほど陽気な声が響き渡る。


私に覆いかぶさっていた浅田ははっと上体を起こし、首を後ろに回す。


そこには、大きな紙袋を胸に抱えた優が立っていた。思いがけないタイミングでの登場に不良たちはざわつく。


「美砂子と……達也? それに翔平も? なんでここに……」


さすがの優でも事態を察したのか、その顔からすっと笑顔が消えた。緊迫した空気が流れる。


「助けて、優!」


私は両足をじたばたさせて泣き叫んだ。優に助けを求めること自体間違っているけど、もう藁(わら)にもすがりたい思いだった。


「お前ら、美砂子と翔平をいじめるな!」


優は紙袋の中からたいやきを取り出し、それを手裏剣のように投げて不良集団を攻撃し始めた。


しかしそんなもので相手にダメージなど与えられるはずもなく、投げたたいやきがむなしい音を立てて、地面に散らばっていくだけ。



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