「そんなんで何で気付かないかな?
初めて雑誌で陽菜ちゃん見た時から顔も名前も印象に残ってたんだろ?人の顔も名前も全然覚えないお前がさ」

拓也の言葉を聞きながら勇人は素直に頷く。

陽菜だけは雑誌で初めて見た時から名前も顔も覚えられた。
正確には、忘れることができなかった。

「PV撮影終わった後も陽菜ちゃんに触った手、じーっと見てたり?
それに、陽菜ちゃん見てたら落ち着かなくて、触れたら動悸がするって言ってたよな?」

確かにあの時そう言った記憶があった勇人は、それにも素直に頷いた。

「いくら陽菜ちゃんの弟とはいえ、一般人の彼に簡単に連絡先教えるのも今までの勇人の言動を見てたら不自然だし?
その日に初めて会った人の家に呼ばれて行くことも……普段の勇人の行動からは想像できないことばかりだろ?」

拓也の言う通り、勇人は今までスキャンダルや個人情報流出を防ぐ為、普段は簡単に連絡先を教えたり誰かの家に行くなどの軽はずみな行動はしてこなかった。

近くのコンビニに行く時すら顔を全面的に隠すくらいで、これでもかというほど徹底していた。

「朝陽君に誘ってもらって俺がいきなり家に行った時、驚いて気絶した陽菜ちゃんの傍をずっと離れずに近くに居続けただろ?」

目の前で倒れられて、心配で、朝陽が気にしなくてもすぐに気がつくと言っても勇人は陽菜の傍から離れられなかった。

「それら全部引っくるめて考えたら意外と簡単に答えは出るし、何より目は口ほどに物を言ってたんだよね。
だから、その目を見た俺も朝陽君も、多分堀原さんも気付いてる。後は勇人が自分で気付いて認めるだけだ。
……好きなんでしょ?陽菜ちゃん。俺に嫉妬しちゃうくらいにさ」

拓也のその言葉に、勇人は自分の中の何かがストン。と落ちた気がした。