「いやー、その時の朝陽君の気持ち……俺よく分かるわー」

新曲のPRの為に、とあるテレビ番組の生放送に出演することになった勇人と拓也は控室で時間を潰していた。

勇人はふと先日の朝陽との会話を思い出し、未だに朝陽の不可解な言動の意味が分からず拓也に話してみたのだが、拓也はその不可解だった朝陽の言動に同調し、腕を組んで頷いていた。

「最初は信じられなかったけど、勇人の言動を思い返したらしっくりきたし?なのに肝心の勇人は自分で分かってないしって言うね。
しかし、朝陽君もやるね。数時間しか会ってないのに見抜くなんて」

「だから、一体何をだ?」

「んー?勇人が気付いてなくて、俺と朝陽君、もしかしたらそのうち周りも気付くようなことだよ」

全くもって教える気がなさそうな拓也に勇人は溜め息をついた。

何を自分で気付いてないのか、拓也と先日会ったばかりの朝陽は何に気付いたのか。
いくら考えても答えが出なさそうな問題にさらに頭を悩ませようとした時、拓也が不意に呟いた。

「あ、もう一人気付かなそうな人がいた」

「もう一人?」

「ほら、今日も一緒に仕事する……と、噂をすれば……かな?」

控室に誰かが近付いてきたのか、何やら言い合うような声が少しずつ聞こえてきた。
その話し声がピタリと止み、ノックの音が室内に響き拓也が返事をすると、ドアが開いてそろりと誰かが顔を覗かせた。

「久しぶり、陽菜ちゃん。
今日もよろしくね」

人好きそうな笑みを浮かべた拓也におどおどと会釈する陽菜。
その姿を見た瞬間、勇人は心臓がトクンと高鳴ったのを感じた。