新学期初日は、教師陣が出張る日だ。
 新入生を校門で出迎えるのも、案内をするのも教師。
 表立って目立った生徒は、入学式と始業式で在校生代表の挨拶をしたリューイチのみ。
 お守り血流事件以来、在校生の席でようやく眺めることができたニコちゃんは、緊張しているのか頬を赤らめていた。
 記憶通り、小さくて可愛かった。
 改めて、抱きしめたい、守りたいと思った。
 そして、ニコちゃんに触れたときの感触がよみがえってきた俺は、胸を震わせた。
 ニコちゃんのクラスは、すでにチェック済みだ。
 そんな俺は、朝から生徒会メンバー全員にドン引きされた。
 当然か。
 俺だって、こんなストーカー気質なヤツがいたら気持ち悪がる。
「本気なのはいいけど、あんなに小さい子を追いつめるようなマネだけは絶対にしないでね。したら、全員で事あるごとにアンタを生徒会室に閉じ込めるから」
 一目でニコちゃんを気に入ったという仁美ちゃんから、厳重注意を受ける始末だ。
 わかってる。
 腐れ縁や親友だけで構成された生徒会メンバーにドン引きされるのはいいとして、ニコちゃんに嫌われるのは絶対にイヤだ。
 まずは、明日の『おはよう大作戦』。
 これを成功させる。
 そして、話のキッカケを作る。
 一人でブツブツ挨拶のフレーズを繰り返す俺は、新学期早々クラスメイトたちから「生徒会って大変そうだな」と誤解からの同情をされた。