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私の膝の上で眠ってしまった実くんを渉くんに託して2人と別れたあと、私は一目散にある場所へと向かった。

ーー悠がいるはずの、305号室へと。

渉くんの想いを聞いて。実くんの悲痛な叫びを聞いて。私はいてもたってもいられなくなってしまったんだ。

このまま、看護師さんに花だけを預けて、悠と顔を合わせない日々を続けていたら。悠の記憶は一生戻らない気がする。悠を信じていない気さえする。

迷惑がられたとしても、例え嫌われたとしてもしても、私は今の自分の確かな気持ちを、悠に伝えなければ。

ーーこの先何があろうと、あなたを信じてずっと待っている、って。

305号室の前に着くと、私はためらわずにドアをノックした。はーい、という愛しい声が聞こえてきた。私はドアを開けて中に入る。


｢ーー折原さん｣


悠は驚いたように私を見ていた。激しく拒絶されることも覚悟していたけれど、そんな素振りはなかった。

ーー何故か、切なそうな顔をしたようにも見えた。


｢少しだけ、久しぶりだね。具合はどう？｣

｢まあ……悪くはない、かな｣


歯切れの悪い返事をする悠。そういえば、もう入院して随分経つ。以前にも少し気になったけれど、交通事故に遭ったとはいえ、ただの骨折でこんなに入院が長引くものなのかな？