なんでなな、…あなたなの……っ!?




そんな苦しくて悲しい感情、ななと出会ってから死ぬほど経験した。

ななはなにも悪くない。そんなこと、
分かってるのに


わたしと違って美少女で勉強も運動もできる、産まれながらの完璧人間と比べないでよ。

同姓同名だからって。




私が小学6年の頃。1回だけななと同じクラスだったことがある。





「では今から席替えをしまーす!先生が呼んだ子から順に座ってってねー」

まだ30代いってないくらいの新入り先生が必死に声を張り上げながらクラスメイトの名前を呼ぶ。

席替えは3ヶ月に一度のみんなの楽しみだった。

「鈴木さーん!!松山くん!!」

「きりのさん!!小城くん!!」
あ、呼ばれた。

そう思い、新しい席に着いた。
すると今日から隣の席の小城くんが怪訝そうな顔でこちらを見ながら言った。
「おい、ここ桐乃の席だからどけよ」

……え?
「あ、えとわたしも桐野でー……」

「あ?あー、そういやもう一人いたなー、
きりのってやつ」

ドクン、ドクン
「う、うん…」

「えー、なあんだ。きりのってこっちの桐野かよー」

ドックン
小城くんのため息混じりの声が頭の中で痛いほど響き、リピートされた。

こっちの桐野かよー

「……っ!!」

最悪最悪最悪最悪
ななと一緒のクラスじゃなかったらこんなこと言われなかったのに。
こんな思いしなかったのに。
こんな辱め、受けないですんだのに…っ!!

次々と自分の頭を負の感情が埋め尽くす。


……


これが1番比べられて悲しかった時。

ななのせいじゃないことなんて…分かってるのに。
自分って嫌なやつだなーて改めて思う。

だめだ、ななを見習わなきゃ!
でも出来ない。あんな誰にでもニコニコするなんてこと。




なんで、よりにもよってあの子と同じ名前なんだろう。






わたしが中学校に入学した日のこと。
わたしは入学式に遅刻しそうになって小走りに桜満開の大通りを通った。前髪が崩れないようにだ。


そんな時だった。

小洒落た店のショーウィンドウの前で何やら荷物を落としたおばあさんと一緒になってしゃがんで中身を拾う桐乃ななを5mほど先に見つけた。

わたしはそのまま通り過ぎようとしたが、おばあさんの前にさしかかったところで桐乃ななと偶然目があってしまったので見過ごす訳にはいかないとおもい、
「わたしも手伝いますよ!」
と言って腰をかがめ、斜め前に落ちていたオレンジを拾いおばあさんに手渡した。


すると桐乃ななとまた目が合い、次はお互いに微笑んだ。


その日、思ったよりも遠くに転がってった果物を拾い終わった私達はボロボロになりながらもダッシュで行ってギリギリ間に合った。


桐乃と桐野で名前が同じなので入学式でもクラスでも席が隣と後ろとで近かった。


体育館に行く途中、ななはずっと必死に話しかけてきてて可愛いなって思った。


話しているうちに三日目にはとても仲良くなっていた。



月日は流れ、今日から高校生だ。新品のブレザーに袖を通す。

「いってきます!」

わたしは急いではなかったがなんとなく少し小走りで二人の家の中間地点にある待ち合わせ場所めがけた。


「なな!お待たせ!!ごめん遅れて!」
2分くらい遅れてなながきた。

「ううん、大丈夫!」
わたしはそれよりも薄ピンクに染まった空に夢中だった。

「桜満開だねえ…」

「…ね、」

2人で桜を眺めていたら桜の花びらがななの筋の通った鼻の上に舞い落ちて2人で顔を合わせて笑った。

ななとは中学生の頃から一緒に登下校するようになった。


わたしが頼んだんだ。


「とーちゃく!」
なながニッと笑いながら校門を通った。


瞬間、わたしの後ろを歩いていた男子生徒2名がななを見ながらなにか話していた。



……



「クラス離れちゃったね…」

「ね……」

「でもむちゃ遊びに行くから!」

「うん、ありがとう」

「あ、そろそろいかないと!んじゃね!」
そういってななは廊下を走ってった

「廊下は走らないでくーださい!」

「はーい!」

ななとわたしは顔を見合わせて笑った。




ななはすぐ新しい友達できるんだろうな。

すごいモテて、彼氏とかすぐに出来たりするんだろうな。

ああー……ななになりたかっ
「ね、君ここの席?」

び、びっくりした…
「あ、はっはい」

「俺隣の席の」