その日の夜。

「失踪事件!?」

「ちょっ…聖恵、声が大きい」

「ご、ごめん…」

聖恵の大きな声に周りは特に気にしていないようで安心した。

行きつけのバーで聖恵と一緒に飲みながら、私は今朝武智さんから聞いたことを話していた。

聖恵が勤務している学校も夏休みに入ったので、こうして2人で飲みに出かけるのは久しぶりだ。

「武智さんの同居人の…えーっと、蜂須賀さんだっけか?」

そう聞いてきた聖恵に、
「うん、蜂須賀さん」

私は首を縦に振ってうなずいた。

「と言うか、一緒に住んでいる人がいたんだ」

「男の人だけどね」

喉を潤すために私はカシスオレンジを、聖恵はファジーネーブルを口に含んだ。

「近所のスーパーマーケットで働いているんだって」

そう言った私に、
「へえ、そうなんだ」

聖恵は返事をした。