9話「睨み合い」



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 また、千春の様子が変わった。
 彼女は結婚や働き方の変化がストレスになっていると思い、秋文は見守ってた。
 
 けれど、どうやら違うようだった。
 前までは、旦那である自分の役に立ちたいと、必死に家事をこなしており、秋文は少しぐらい自分にも頼ってほしいと話した。
 彼女が頑張りすぎて体をこわして倒れてしまったこともあり、千春はすごく反省して、少しずつ秋文に頼ることも多くなってきていた。

 愛しい奥さんに頼られるのは、秋文だって嬉しかった。
 せっかく夫婦になったのだから、彼女をもっと甘やかしてやりたかった。
 くっついて、キスして、抱きしめ合うだけが甘やかす方法ではないのだとわかってはいるが、なかなか難しいと、秋文は実感していた。


 最近の千春は、家事よりも仕事が忙しそうだった。
 彼女は今日も仕事に終われており、自室に籠って夜中まで仕事をしていた。
 日付がすぎてから2時間が経った。仕事があるので秋文は早めに寝てしまう事もあったが、今日は千春を待っていようと決めていた。
 邪魔になるのはイヤだったので、寝室やリビングで彼女が部屋から出てくるのを待っていたけれど、一向に出てくる気配はなかった。

 秋文は、流石に遅すぎると思い、邪魔になるのを覚悟で、ドアをノックした。
 コンコンッ………コンコンッ………。
 何度か繰り返すが返事がなかった。
 

 「千春?……入るぞ?」