「はぁ、牢屋も退屈だったけれど……ここも大して変わらないわねぇ」

ベアトリクスは部屋に飾られていた花瓶の花に手を伸ばし、すでに枯れて褐色になった花弁を摘まんでは床に落としてため息をついた。

「まぁ、そう言うな。大罪を犯した囚人を匿っている私の身にもなれ」

ジークやランドルシア王国軍が血眼になって探している今、ベアトリクスは王都外れにあるグレイグ・ミューラン卿の別邸に身を隠していた。

「けど、お部屋の窓から青空が見えるなんて……私、それだけでも満足よ。久しぶりに外の空気を吸ったの。ねぇ、グレイグ、後で裏庭へ連れて行ってちょうだい。お花を摘みたいわ。ふふ」

彼女はところどころ発言が幼稚だ。長い間、俗世から隔離された生活を送っていたため身体は老いても頭の成長は止まったままなのだ。