「ベアトリクス様。どこかお身体の具合の悪いところはございませんか?」

日の光が差し込むことすらない地下はいつも松明の火が照らしているだけで、今が昼なのか夜なのかさえわからない。ここは時間を感じない異質な空間だった。

ソフィアはベアトリクスに夕食を配膳する際、彼女の体調を診る。それは軍医として毎日の日課でもあった。

「身体だけは元気よ。心は荒んで病んでしまっているけれど……。昨夜は雨だったのかしら?」

「ええ、昨夜は珍しく大雨でした」

「どうりで湿気が多いわけね、ベタベタして気持ちが悪いわ」

文句を言いながらいつものように鉄格子越しから腕を差し出すと、ソフィアは脈をとった。
ベアトリクスは少し頻脈なところがあるが、それはいつものことで特に体調に異変はないようだ。