マーランダ施療院は王都から少し外れた場所にある。

(枷ってなんのこと? もしかして、自分の気づかないところで、私……ジーク様のご迷惑になることをしてるんじゃ……)

アンナはそう思うとたまらなくて立ち止まることなく走り続けた。途中で足がもつれて転びそうになったが、ソフィアの言っていたことが頭にガンガンと響いて乱れる呼吸に何度も胸を押さえた。
大通りを抜けると、ひっそりと佇む煉瓦作りの二階建ての建物の前に行きついた。いつもなら正門に門番が立っているが、時間外ということもあり今は誰もない。無償治療を受ける人たちが出入りするためか鍵もかかっておらず、そのおかげですんなりと院内に入ることができた。

マーランダ施療院には数十年前、父に連れられて何度か来たことがある。おぼろげだが建物内のことは頭に残っていた。

(ここだわ)