それからというもの、私の中で、藍原への気持ちに、変化が生まれ始めた。

怪我が治るまでの過保護は、治ってしまった今、全く無くなったのは当たり前だが、彼の優しさは前以上に感じられるようになった。

「明日香ちゃん」
「なんですか、早乙女さん」

デスクワーク中、外回りから帰ってきた光が、私に声をかけてきた。

「…今度ちょっと大きな仕事をするんだけど、一緒にその取引先に同行してもらいたいんだ」

「…私で大丈夫ですか?」

営業の経験なんて無いわけで。

「大丈夫。俺の傍らで、事務処理をしていってもらいたいだけなんだよね」

その言葉にホッとする。

「そんな事でしたら、お安いご用ですよ」
「良かった。とりあえず、明日の午前中に、そこへいくから、ノートパソコンとか、この書類作成お願いします」

「わかりました。精一杯頑張ります」
「宜しくお願いします」

そう言って、お互い頭を下げると、何だか二人とも可笑しくなってクスクスと笑いあった。

「こうやって改まっちゃうと、照れるね」
「ふふ、そうですね」

「じゃあ、俺まだ別件の外回り行ってきます」
「行ってらっしゃい」

私は、自分の仕事を早々に済ませ、光に頼まれた仕事を早速始めた。