…朝、目が覚めた私は、目の前にある藍原の寝顔に、飛び跳ねそうになった。

だが、藍原は寝入っているため、起こすのは申し訳ない。口を押さえて再び目を閉じて、寝たフリをする。

離されない手が気になる。

昨夜は確かに藍原は寝室を出ていった。

その後、一人で眠りについたはずなのに。

…そう言えば。

いつかわからないが、怖い夢を見たのは覚えている。

でも、間もなくして怖くなくなった。

もしかしたら、こうやって私の手を握りしめてくれたお陰で、ぐっすり眠れたのかもしれない。

…あ、手が、離れた。

それから間もなくして、ドアを開閉する音が聞こえて、私はようやく目を開けた。

藍原が握っていた手は、とても温かかった。

会社では、絶対に見ることのできない藍原の一面を見た私は言い様のない気持ちになっていた。