大手建築会社のひとり娘として生まれた私は、世間一般から見たら『お嬢様』だけど、本当の私は違う。
特別な教養を身につけたり、たくさんの習い事に通うこともなく、のびのびと自由に育てられてきた。

病弱な母親と多忙な父親に代わり、私を育ててくれたのは母方の祖母だった。

お母さんの実家はごく普通の一般家庭で、昔ながらの日本家屋で私は幼少期の大半を過ごしていた。

祖母宅で過ごす毎日は新しい発見の連続で、とても楽しかった。

農業を営んでいた祖父と共に畑に出て、手伝いをしながら土まみれになり遊んで。新鮮な野菜とおばあちゃんの美味しい料理を毎日食べさせてもらって。

祖父は私が小学校に上がる前に病死してしまったけれど、両親と過ごす時間が少なくても、ふたりのおかげで私は一切寂しい思いなど一度もしたことがなかった。

そして憧れた。私も祖父母のような夫婦になりたいと。

よく言い合いをしていたけど、すぐに仲直りできるほど仲が良くて、いつも笑って過ごしていた。

だからこそおばあちゃんは、おじいちゃんが亡くなった時、たくさん泣いていた。