春が過ぎて、桜の木を見てみるとピンク色と緑色が混ざっている。

俺、藤原 新(ふじわら あらた)は、部室のドアを開けた。

「春過ぎて 桜散り行く 切なさや」

俺は、ドアを開けたと同時にさっき思いついた俳句を口に出す。他の部員はそろっていて、皆は驚かずに俺を見つめた。

「星見上げ 夜空に描く 大三角」

俺の後に続いて、俺の友達の天宮 秀(あまみや しゅう)が川柳を口に出した。机の上には、たくさんのお菓子が置かれている。

これ、いつもの光景なんだよね。

「部長、今日も素敵なご登場でしたね」

秀は、イタズラっ子の笑みを浮かべた。俺は、この『川柳同好会』の部長をしている。俺が高校1年の時に作った部活で、高校3年生になった今でも誰も入ってこない。むしろ、入ってこない方が嬉しかった。

俺は、秀を軽く叩いた。秀は、無言で笑ってイスに座る。

「さて……」と俺は、辺りを見渡す。皆は少し緊張した目で俺を見た。

「ともえ、しずか」

俺は、2人の女子の名前を呼ぶ。この2人は、桜井(さくらい) ともえ、桜井 しずか。2人は、双子の姉妹なんだ。でも、性格は正反対なところがある。

「何?」とともえが微笑んで、しずかは、無言で僕を見る。

「この間、2人で詩を書いてたでしょ?あれを国語の先生が読みたがっているんだ」

「……分かった。また、国語の先生に見せるよ~!」とともえが花が咲いたような笑顔をみせる。その笑みを見て、俺の鼓動が早まった。

「分かった」としずかは、無表情でうなずく。

「ねぇ!このお菓子あげるよ。美味しいから!」

ともえが、俺にお菓子を渡してくる。俺は「ありがとう」と言って、微笑んだ。