『今日はお越し頂いてありがとうございます。それではお話しますのでお掛けになってください。』





面談室にパパと呼ばれて藤堂先生から今の病状の説明が行われる。




わざと聞かないようにしている訳ではないけど、私にとって一番苦手な時間だから体が聞かないように会話が耳に入ってこない。





隣にいるパパは真剣な顔をして聞いてる。




紳士服を売る会社に勤めてるパパ。
本当は商品の服を毎日替えて着て、出勤しなくちゃいけないのに。
本当は出世できるくらい売り上げもいいのに。






私の入退院があるから、男手一つで育ててくれてるから、会社のデザインしたスーツも購入できないし、出世もしないでひたすら働いてくれてる。




ごめんね、パパ。私がこんなんじゃなければもっと楽な生活ができたのに。





こんなに苦労させてごめんなさい。





しみじみしている私に気づくとパパが前を向いたまま立ち上がっている。





え?






『終わったよ。』





パパの前にいる藤堂先生が呆れた顔で私を見下ろして立っていた。





「あ、はい。」





適当な言葉で返事をする。





『本当にお前ってやつは…先生の話をちゃんと聞きなさい。』




隣で立ち上がってるパパも呆れ顔。




「うん…。」




しょうがないじゃん、耳に入ってこないんだから。





『本人にはまたこちらから説明します。』




って、何か重要なこと言ってたのかな。今更ながら不安になる。どうせまだ入院が長引くってことなんだろうけど。





面談室で話が終わるとパパはそのまま仕事だと言って、着替えを渡されて別れた。
着替えなら病院で洗濯もできるのに。
そんなことをしてるくらいなら、もっと……。






『もう一回説明するから、部屋に行くぞ。』





パパの背中を見送って立っていると
後ろから藤堂先生の声。





「はいはい。」




いつものことだけど面倒くさい。話を聞いてない私がいけないのだけど。





『どんどん進む。』




面談室からダラダラ歩く私を急かしながら後ろを歩く藤堂先生。