2話「冷たい指先と出会い」




 あの日から、3日。

 夢の元には、理央からの連絡は何もなかった。
 きっと自分の右手の石は、大したことがなかったのだろう。
 少し落胆したものの、夢は気にしないようにして、いつも通りの日々を送っていた。


 この日は厳しい冷え込みで、夢の左腕の調子が悪かった。朝から腕を温めてみたけれど、上手く動かない。
 けれど、忙しい時期だったために、仕事を休むわけにもいかずに、出勤をしていた。が、やはり手が上手く動かずに苦戦を強いられていた。


 「十七夜さん、大丈夫?今日、ペース遅いみたいだけど……もしかして、調子悪い?」
 「すみません。少しだけ動きにくくて………でも、頑張りますので。」


 上司に心配されつつも、夢は申し訳がない気持ちでいっぱいになり、俯いたままそう答えた。


 「あんまり無理しないで。帰ってもいいからね。」
 「……はい。」


 きっと上司は、夢の体調を心配して声を掛けてくれたのだと夢もわかっていた。
 それでも、期待されていないと感じてしまい、夢は更に落ち込んでしまった。

 どうにか就業時間まで頑張ることは出来たものの、仕事はいつもの半分ぐらいしか終わらなかった。


 「明日、早く出社しようかな。」


 ため息を着きながら、帰りの支度をして職場をひとりで出た。
 今日の夕飯は何を食べようか。そんな事を考えながら、夢がトボトボと歩いていた時だった。