先輩が旅立つ日は、日に日に近づいている。

俺は、先輩を傷つけたままだ。先輩はずっと繋がることを望んでいる。しかし、俺はそれに大きく頷くことができないままだ。

本当はずっと一緒にいたい。先輩の卒業式に花束をプレゼントしたかった。キスをして、ハグをして、いろんな場所へ行ってもっといろんな思い出を作りたい!

しかし、それを伝えれば、先輩は大好きなピアノに集中できなくなるんじゃないか。先輩が夢を諦める姿など見たくない。俺は、先輩のピアノが好きだ。そして、先輩が好きだ。……いや、愛してる。

まだ先輩に片想いしていた時の気持ちを掘り起こす。ああ、懐かしい思い出と感情だ。

俺の頬を涙が伝う。俺が、言わなきゃいけないんだ。先輩に夢を追いかけてもらうために。先輩が留学して学ぶために。

もう、答えは決まった。

「先輩、話があるんです」

放課後、久しぶりに早く音楽室へと向かった。突然現れた俺に先輩は驚く。

「……何?」

「部活が終わった後、話していいですか?」