料亭のような立派な日本料理のお店は私には場違いな気がして居心地が悪い。
 もっと居心地が悪いのは、会社を通しての会食のはずなのに林田課長の姿は見えず、美咲さんと大津さんだけだったこと。

「貴重なお時間を取っていただき申し訳ありません。」

 大津さんが私達に頭を下げるが、美咲さんはどこ吹く風。

「俊哉と2人で話したいのだけど、いいかしら。」

 いつか見た天真爛漫な笑みを浮かべ、私達に有り得ない要望を口にする。
 それに対して冷たい表情を向ける高宮課長が堅い声で答えた。

「このようなご戯れは今日までにしていただきたい。」

「分かってる。」

 天真爛漫な笑顔の陰に悲しそうな表情が見て取れたような気がして胸が痛くなった。

 この人も彼を好きでいた人………。
 そう思うと他人事には思えなくて、、。

 そこまで思って頭を振る。
 散々この人のせいで振り回されて来たのにお人好しが過ぎると自嘲した。