「藤花。好きだよ。
 このまま、離れたくないな。」

 甘い囁きは夢の中。

 今日で『俊哉さん』と話していない日は連続で8日目に突入した。

 同一人物である『高宮課長』と私は毎日話してるんだけどね。
 話し……てるってことになるのかは甚だ疑問だけど。

「高宮課長、最近変わったよね。」

「物腰が柔らかくなった〜。」

 周りから聞こえてくるのは概ね高宮課長のイメージがよくなったという高評価。

「良かったね〜。
 めでたく付き合うことになって。」

「しかも高宮課長のイメージも良くなってるし、いいこと尽くめね。」

 仲良しの佳乃ちゃん、真美ちゃんが自分のことのように喜んでくれているけど、私は浮かない顔をしていた。

「付き合いたての今が一番楽しい時でしょ?
 なのに、何?その顔。」

「だって〜。」

 周りが高宮課長にキャーキャー言っている中で私は社内恋愛、直属の上司と部下という間柄を持て余していた。