……………監視カメラ?



私はぐるりと部屋を見渡す。



考えたことなかった。



私はマンガをもう一度見る。



主人公の男の子は監視カメラでずっと見られていたんだ。



「……どうしよう…どこに……」


この日、私はずっと監視カメラを探し回った。

ベッドの下。冷蔵庫の上。ソファーの隙間など。

けれど見つけることは出来なかった。







『………ただいま、………………………花菜?』


『お母さん…………おかえりなさい…』


『どうしたの?暗い顔して………何かあったの?』


『………別に』


『?花菜…………………!!どうしたの!?その顔!?…』

『……うぅっお母さんっ!』


『……何があったの?なんでそんなに痣が…』


『………男の子達がね、「いっつもおんなじ服来てるっ!貧乏じゃん!」って言ってね、私のワンピースを絵の具で汚してきたの。それで………』

『!!……………』

『それで…「やめて!」って何回も言ったんだけど止めてくれなくてね、そしたら私の爪が男の子を引っ掻いちゃってそれで………』


『………殴られたの?』


『…………うん』


『……………………そっ……か…。………ごめんね…花菜ごめんね…』


『お母さん?どうしてお母さんが謝るの?お母さんはなんにも悪くないでしょ?』


『ごめんね…花菜。お洋服も、おもちゃも………好きなもの買ってあげられなくて………ごめんねぇ』


『………お母さん……泣かないで…』

『……ごめんね』







「…おはよう」


「お早うございます…」


「…マンガ読んだ?」

「はい…」

「…そう。ここにご飯置いておくからね…」


『ガチャン』


ごめんなさい、お母さん。


またお母さんの夢を見た。


あれは、男の子にいじめられてワンピースを絵の具まみれにされた。



ワンピースは結局所々絵の具がついていて落ちなかった。


お母さんは何度も泣きながら私に謝っていた。




「……ご飯食べよう…………」


私はご飯にてを伸ばした。

「………唐揚げにしよう」

私は唐揚げを口に運んだ。



「…美味しい」


おにぎりがあるのでそれも食べようとした。

そして気づいた。


「…あ…れ?」



そういえばあいつ。

服を着てみた?とか漫画読んだ?とか聞いてきたよね?


監視カメラをみていれば聞かなくてもわかるはず。


聞いてきたってことは…………………………………………………




…………監視カメラはない?



「…………でも」

なんでないの?


私はてっきりどこかにはあると思ってた。

もし私が誘拐犯なら絶対につけている。

あのマンガの男の子みたいに逃げられたりしたら困るから。



「…………もし、監視カメラがないなら…」


いける。



ここから脱出できる。



けれど1番難しいのは…

私は唯一外に出れるドアを見た。


あいつがいつも朝このドアを開けて入ってくる。


「………鍵をあいつはいつもかけてるよね」


私はそっとドアノブに手を置いた。



「…ここを開けれれば…………お母さんに………」



ここから出れれば……………会える。






私はマンガを全部読んだ。

前みたいに脱出に使えることが描かれてるかも知れないから。




けれどなかった。9冊読んでみても良いことは描かれてなかった。


「……あとはこれだけ…」

私がずっと避けて読んでいなかった本。

血だらけの女の人が表紙にいるから。


怖くてあんまり見ようとしなかった。


私は勇気を振り絞ってマンガを開いた。





「……………あ……………………そっか…」


心の何かがストンと落ちてスッキリする。






「………壊したら………もう動かなくなるのか……」




ここに来て、初めてに近い心のそこからの笑みがこぼれる。







もうすぐです、お母さん。