「遥斗…遥斗起きて!」

「ん〜レナさん?まだ眠い…」

幼い頃の夢を見ていたが、彼女の声で目が覚めた。

3階のアパートの窓の外では小雨がぱらつき、裸体には肌寒くて、布団と彼女の身体を手繰り寄せる。

「もー電話、鳴ってるわよ?
多分、パパから!」

付き合って3年。同棲して半年が経ったある朝、俺は珍しく早朝5時に無理矢理起こされている…。

「ん?電話…?!」

ようやく枕元の着信に気づいた俺は、
慌てて携帯の通話ボタンを押した。

「はい!青山です!」

寝起きの枯れた声がバレないように小さく咳払いをすると、受話器の向こうでハスキーな男性の声。

[…おはようさん。と言いたいところだが事件だ。すぐに現場に来い!新入り警察犬!]

「うあっ!?はいっ!場所は?!…はい、
はい!わかりました!」

俺は飛び起きて、タンスからシャツを出し着替えながら住所を聞いた。
ベッドの上でレナさんは俺の慌てぶりを楽しむような表情でシャツを羽織っている。

「ほら、パパだった。その様子だと事件みたいね。」

「うん。二丁目の公園で不審死体だって。」

スーツに着替えた俺は、寝癖を直していると
洗面所の鏡越しでレナさんが俺を見つめながら後ろから抱きついてきた。

「今日も遥斗は、無事安全に帰ってきます。」

祈るようにそんな言葉を呟く彼女が可愛くて、
柔らかい茶髪を撫でながらキスをした。

ドライヤーをしまい、無造作に着たシャツの上から彼女の豊満な胸を優しく撫でると、
色っぽい唇から吐息が漏れてくる。

「ん…遥斗、ダメ。行かなきゃ、ね?」

「レナさんが可愛い事言うから…。
もっかいキスしたら行く。」

これ以上興奮してしまったりすれば
確実に遅刻してしまう為、
最後に甘いキスを唇と頬に落とした俺は玄関へ急いだ。

「行ってらっしゃい!
今日も遥斗らしく頑張ってね!」

「うん、行ってきます。
レナさんも仕事頑張って。」

こんな言葉を交わしあえる俺は幸せ者だ。
多分、今俺の人生、うなぎ登り真っ只中。

手を振り合うと、俺は駆け足で現場に向かった。