かったるいだけの会議から帰ってくると、茉咲がいなかった。
資料室にでもいったか?
しかし荷物もない。帰ったのか?

茉咲はいつも俺に負けず劣らず、帰りが遅いのに。
体調でも悪いのか?そんな風に見えなかったけれど。

「近藤さん。稲村は?」

稲村茉咲。俺の部下で、高校・大学の同期で、今は俺の恋人。
2か月前に、告白したらOKを貰えた。

茉咲がこれ以上、他の男と付き合うのが耐えきれなかったから。

「帰りましたよ〜!稲村さん」
「帰った?」

付き合い始めてから、俺の仕事が
急に忙しくなった。商品化が決まったから。

だから、茉咲とは恋人らしいことを何もしていない。今までの女は忙しくなるとグチグチうるさかったけど、茉咲は何も言ってこない。たぶん、俺が忙しいのを理解してくれているから。

俺も今までの彼女と違って、どんなに忙しくても、ちゃんとラインの返信しているし。

俺の中で茉咲は特別な存在。
他の女といても、絶対に忘れることが出来なかった愛おしい存在。

茉咲はいつも、色んな話を聞かせてくれる。それこそ、部活の先輩と付き合うことになったとか、隣のクラスの子に告白されたとか、そんな聞きたくもないことまで。

女子会があれば言うし、実家に帰るという報告もくれる。

そんな茉咲が早帰り。
何か用事があるとは聞いていない。

「体調でも悪いのか?」

気になって近藤さんに尋ねると、彼女はウフフと楽しそうに笑った。

「そんなことないですよ〜!デートですよ、デート!」

え?

「今日クリスマスじゃないですか!会社まで迎えに行くってさっき、ライン来てましたよ〜」

デート?誰と誰が?
え。茉咲って俺のじゃん。

なんで?てか、誰と?

恋人らしいこと、何もしていないから?呆れられて、他の男に行ったの?

「嘘だろ」
「本当ですよ〜!って、瀬戸リーダー!?」

気づいたら、走り出していた。