窓の外
ざわざわした音が消えたね
窓際に行くと 雨の上がった匂いが少ししたよ

白い石畳に 美しい初夏の光
きっときっと忘れられるよね
つかんだその手はいつも消えていくのに
自分という存在は残ったまま



いつもの街並みで
隣同士で歩く2人組を見かけては
いいな
そう思っていたわ
私達もそう出来るんでしょう?

ねぇ……
別に昔のこととか これからのこととか
今はいいの 少しだけ側にいさせて

少しの間だけ あなたの恋人で
喧嘩したり 笑ったり すねたり 泣いたり
みんな よくやっていることでしょう?
私もそれがしてみたいだけ



だけれど……

悲しい話を聞いても
私はあなたじゃない
私はワタシでしかない
あなたを救ってなんてあげられないんです

救って欲しいとも思っていないのでしょう?
あなたはそのまま眠ればいい

報われないまま
愛しい人の躯と一緒に郊外の小さな森で
ひそかに眠るのです

悲しみに暮れたまま
あなたは生を終えてしまうの

そこで私のあなたの物語はおしまい

この先
誰かがあなたを倖せにするかもしれない

でも……
私のあなたの物語はそこでおしまいなの

悲しみに暮れたまま
あなたは生を終えてしまうの



あなたと過ごした無邪気な時間
忘れないよ

私を見つめた
くるくるとよく動く
すこし潤んだ瞳

見上げたら
どうしたのって顔で
首をかしげたね

繋いだ手は離れていって
もう二度と繋がれることはないんだよ

想い出の中の瞳
こんなに時間が過ぎていって
霞んで行くのに

その瞳だけ
忘れられないよ

残酷すぎる時間の流れと
風化してゆくもの
永遠なんて無いんだね



本当は
1日だけの恋人でいい そんな風に
わがまま言わせてとお願いしたかった
優しいあなたは 叶えてくれそうで……

でも……
私のあなたの物語は終わってしまったの



ごめんね 気にしないで



でも

その瞳だけ

今でも忘れられないよ