1年がむしゃらに頑張った。

頭からは、唯ちゃんの事すら抜け落ちていた。

試しに男の先生を募集するという幼稚園があると

託児所でバイトを続けていた朋から情報をもらったのは

5月に入った頃だった。

直ぐに、その幼稚園をリサーチして

自分に合いそうか、長く続けられそうか?

給料?幼稚園の規模は?となるべく詳しく調べると

一人男の先生がいることがわかった。

バスの送迎や事務職、教室にも入っていることから

資格のある人のようだ。

その人は、10年近く勤めているらしい。

これなら大丈夫だ。

僕も続けられる。

そう確信すると、どうしてもその幼稚園に勤めたくて

幼稚園の特色に合う資格も取ってみた。

教員採用試験にも、無事に合格し

幼稚園の面接では、この幼稚園に勤めたい気持ちを誠意一杯アピールした。

そのかいがあって、無事に春から幼稚園の先生になることが決まった。

幼稚園を紹介してくれた朋にお礼を言い

小学校への就職が決まった朋と二人、祝いの美酒に酔いしれていたら………

「嫌、礼は良いよ。
航の気持ちに気づいて先に抜け駆けした詫びだから。」と。

酔っぱらいの戯れ言とほっといて

お互い頑張ろうと別れた。

そうして2月

就職前の実習に幼稚園に訪れると

同期は、偶然にも中学の後輩の咲だった。

バレー部の1年で、夏が終わった頃に引退した自分とは

あまり関わりがなかったけど……

可愛いが気が強いと有名な女の子だったから

記憶にあった。

向こうも、何となく見たことがあるくらいには記憶があったようで

「先輩ですよね。
今日からは、唯一の同期なので……仲良くして下さいね。」と言ってきた。