赤いレンガがおしゃれな洋食店『あけび亭』のドアに俺は手をかけた。

カランコロンカラン

「いらっしゃい…ああ、践か」

そう言って俺を迎えてくれたのは、2番目の兄の凱だった。

「よっ」

手をあげて声をかけた俺に、
「そう言えば今日だったな」

凱は椅子を引くと、俺に座るようにと促してきた。

夕食時のピークが終わったと言うこともあってか、客は少なかった。

俺が椅子に腰を下ろしたことを確認すると、
「ハヤシライスでいいか?」

凱が声をかけてきた。

この店にくると、俺はいつもそれを頼むのだ。

「んーっ、今日はスコッチエッグの気分だな」

俺が返事をしたら、
「…わかった」

凱はそう言うと、厨房の方へと足を向かわせたのだった。