「これでいいよね」

玄関の鏡に映っているその姿に、私は呟いた。

二ノ宮さんと動物園デートに出かける当日を迎えた。

その日の私の格好はシャツとジーンズ、上には仕事でいつも着て行っているパーカーを羽織っていた。

足元はスニーカーだ。

服を貸してあげると言うゆかりを何度も押し切った結果だ。

「今日こそは事情を打ち明けて、ちゃんと謝ろう」

鏡の中の自分に向って言い聞かせるように呟くと、私は深呼吸をした。

「行ってきまーす」

誰もいない我が家にそう声をかけると、私はドアを開けた。

「おお、寒い…」

ドアを開けた瞬間に入ってきた冷たい空気に、私はブルリと躰を震わせた。

もうすぐでやってくる冬の訪れを肌で感じながら、ドアにカギをかけた。