ケータイ小説 野いちご

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あり得ない男と、あり得ない結末

3.あり得ない恋愛


「だから……遠山さんと会うのも久しぶりで、ちょっと思い付きで遠出しちゃったのよ」

自宅からの電話に、私は少しばかり後ろめたさを感じながら説明する。
電話の向こうは父だ。
さすがに男性と一緒とは言えず、遠山さんと温泉に来てしまったと言い訳した。
細かいところを突っ込まれたらぼろが出そうなので、早く切りたくて仕方ない。

私は、今でも自宅から会社に通っている。(だって、いい立地に家があるんだから出る理由がない)
飲み会のときには、友人の家に泊っても怒りはしないし、二十四歳の娘を捕まえてそこまで厳しいってことはないけれど、さすがに二晩目となるといい気はしないらしい。

折しも、後押しするように雷雨はひどくなってきている。
車を出して迎えに行く、という父を止めることができるのは助かる。

「とにかく心配しないで。明日は昼までに帰るから」

まだ何か言いたそうな父にそう告げて電話を切る。
ここは朝に入浴した温泉宿だ。
駅でビニール傘を買って、幾つか宿を巡ったけれど、満室というところが多くて、最後の望みを託してここに来ている。
阿賀野さんは私の電話が終わったのを確認すると、困った様子で手招きする。

「美麗。一部屋なら空いてるんだけど」

「え?」

「いっか。同室でも」

それはどっちの意味? いいか?って私に聞いてる? それともまあいっかって納得してるの?

「ど、ど、同室って」

「心配すんなって。嫌がる女に手を出す趣味無いから。つーか、昨日も同じ部屋で寝たしな」

「昨日は瀬川さんもいたでしょう!」

思わず大声を出してしまったから、妙に悪目立ちしてしまった。

「はいはい、行こうぜ。疲れて眠いや」

肩を抱かれて、ぎょっとするけれど。
痴話げんかかしらと覗いてくる好奇の目から逃れるために、私は素直に従った。

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