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 咲也が不登校になったのは怪我が原因だった。


 彼はテニスが好きで、幼少の頃からラケットやテニスボールで遊んでいたのだと言う。
 中学ではそれなりのいい成績を残していて、高校最初の大会では一年生ながら入賞することが出来た。


 しかし利き腕の調子が悪く、大会後に受診してみれば肩や肘に異常が見つかった。日常生活に問題はないが、テニスを続けることは難しい。


 ずっと側にあったテニスと別れる選択を迫られて、学校に行くことさえ苦痛になって不登校となった。



「改めて考えてみたらさ、テニスを取られたらなにも残らないんだよ。おれ、すごく勉強出来るわけじゃないし、人付き合いがいいわけじゃないし、仲間と呼べる奴もあんまいなくてさ。怪我したって言ったら、部活の奴らみんな離れていったよ」



 そこまで話してから、咲也はため息をついた。