「あっ……」


驚いて一歩後退。

のけぞった拍子にコツっと壁に後頭部がぶつかった。

掛けてある制服のスカートが頭をふわりと包む。


え……な、何……⁈


たぶん、距離的には三十センチもない。

呼ばれて振り向くと、理玖くんの綺麗な顔が私へとグンと近付いていた。

何が何だかわからない。


「ぁ、あの……」


まともに声も出なくなる。

近くで見れば見るほど整い方がハンパない。

美しい……ってレベルの顔。

女の私ですら足元にも及ばない。

理玖くんの片手が、トンと耳の横で音を立てた。

頭一個分は高い背を、私に合わせて低く屈める。


え……え?

い、いきなり……どうしちゃったの?