見間違いだと思った。


いや……見間違いであってほしいと思った。


でも、見間違いなんかじゃない。

そうわかった瞬間、私は壁際に向かって一直線。

理玖くんに後ろ姿を見せないように、慌ててフロアの端っこへと逃げる。


うそっ……嘘でしょ⁈


サァーッと血の気が引いていくのを感じる。

動くに動けないでいると、取り残された理玖くんが不思議そうな顔でこっちをじっと見ていた。


や、やだ……どうしようっ⁈


私が見たもの。

それは、ワンピースについた赤い染み。

迷子になったことと、理玖くんと観覧車に乗ってあんな展開になったことで、トイレで慌てたことなんてすっかり忘れていた。

忘れていた間に、こんな取り返しのつかない事態に……。