「おい。起きろ。おい。内田。」

 ビロードのような深みのある声。
 低音で体に響く声はどこか安心できる声。

 霞がかる視界の中で誰かが私を覗き込んでいる。

「……ごめん、なさい。眠っちゃって。」

 そうだった。
 今は高宮課長のマンションに居候していて、洗濯物をたたんでる途中で睡魔に襲われて……。

「あぁ。そのようだな。
 それにしても眠るにも場所と、それから握り締める物も考えた方がいいと思うが?」

 指摘されて両手で何かを握り締めていることに気付く。
 目をこすり、ソレを凝視する。

 ………ハラリ。

 起き上がって持ち上げた手のひらにつかまれて効果音と共に揺れる……パンツ?

「キャー!!!!」

 思いっきり投げ捨てたのは、あろうことか目の前にいる高宮課長のパンツ。

「おいおい。
 叫びたいのはこっちだし、投げ捨てられるのはさすがに落ち込むんだけど。」

 投げ捨てられたソレを拾い上げた高宮課長は器用にたたんでたたみ終えた洗濯物の山に追加した。