生来、私は待つことが苦手な性分である。子どもの頃から一人っ子ということもあり順番争いに巻き込まれることもなく、親戚の中でも年下だったため、大体のことは優先されて生きてきた。成長するにつれ社会性を身につけ、常識の範囲内であれば待つことができるようにはなり、待ち合わせは1時間以内なら大人しく待つことができるようになった。無論、どちらかというと私は遅刻するタイプである。
さて、以前から友人が「ゴンチャ」という謎の言葉を口走るようになった。聞いてみるとどうやらタピオカドリンクの店のようだ。天神にあるらしくとても人気らしい。前提として、私はミーハーな人間ではない。我が道進むとかいう格好の付く意味ではなくただ、流行に乗れないだけである。ふわふわパンケーキだって一度も食べたことがない。いつかは流行に乗りたいと思っていた。なんといっても女子大生なのである。いわば人類の最先端だ。そんな時天神に行く用ができた。格好の機会である。同行する友人にすぐさま「ゴンチャ」に行きたいと伝えた。「ゴンチャ」この言葉を発するだけで十分流行に乗った気分であった。
そして今日、意気揚々と天神に向かった。日曜の天神というのは恐ろしいほどに人が集まる。小倉でさえ把握できない私にとっては天神など無理難題なのである。しかし「ゴンチャ」に行きたいと言い出したのは私であるため案内せざるを得ない。いざ天地下に入るとそこは迷路であった。この中からパルコへの入り口を探し出しさらにパルコの無数の店舗の中から「ゴンチャ」を探し出さなくてはならない。考えることを諦めインターネットで「天神 ゴンチャ」と検索した。PARCO新館B2F。まずPARCOに旧館と新館があることさえ知っているはずもない。もちろん検索の甲斐なく迷った。
歩きつかれたころ、やっと「ゴンチャ」にたどり着いた。対面した第一印象は思ったよりこじんまりしているということである。人気人気と耳にしていたが大したことがない。現に数人しか並んでいないではないか。さあ、注文するものを決めようとしたその時、友人が私呼んだ。呼ばれるがままについていくと何故か建物の外に出た。せっかく辿りついたのに、ゴールはもうすぐ目の前なのにどうして店から離れるのか。慌ててて呼び止めようとしたがある光景を見て言葉を飲み込んだ。おびただしい人の列である。行列は廊下一本では足りずさらに階段の上まで続いていた。比喩的な意味ではなく先が見えないのである。「ゴンチャ」を飲む、という決意は3秒で崩れさった。せっかく天神までにきてタピオカのために数時間無駄にするという行為が私にはできなかった。だいたいタピオカなんてどこにでもある。イオンのデザート王国になんてなん十種類とあるし、100均にさえタピオカが売っていた。
こうして、私はまた流行に乗ることができなかった。そしてインスタのおしゃれ女子達は並々ならぬ行列を数多く潜り抜けてきたのだと感じた。ある程度の耐久力持ったものだけが流行に乗れるのである。長時間耐え忍んだ末でのインスタ映えである。ちょっと並んだだけで流行にのろうだなんておこがましい話だ。子どもの頃から待つことの大切さを教えられていたらもしかしたら私も流行にのれるおしゃれ女子になっていたかもしれないと考察する今日この頃である。