「もう、死んでやる」と彼女は言った。付き合っていた先輩にフラれたからだ。

「自殺するなら」死装束を着ろよと、幼馴染みの僕は言った。

「貸してちょうだい」と我が儘を言う彼女に、長年のくされ縁だから、仕方がないと諦め、婆ちゃんの形見の死装束を渡してやった。

「その代わり条件がある」と、死ぬ間際の精神状態の彼女に、ひとつ我が儘を、了承させる。

そう最後の刻の一時間前に、僕の指示に従う事。

「わーった」と、彼女は死装束に着替えた姿を、僕に見せにきた。


暗闇の体育館に誘い、体育館の中央で待機させる。
いよいよだと想った僕は後にプロジェクションマッピングと呼ばれるに至る仕掛けに似たモノを暗闇の彼女の衣に映す。

たまたま体育館を通った宿直の先生やそのギャラリーが、艶やかに写される彼女の着物の花柄に見いいる。

「素敵」「きれい」「うわっ」とか言うギャラリーに彼女が、驚き、嬉しくなり死ぬ気を無くしたのか?

「ありがとう」まだ咲けるかな私と、言う彼女。
僕はキザな言葉を贈った。