春の風が爽やかに優しい音を立てている。

私達は、翼の車が停車してある前まで、ゆっくり歩いて来た。

「これだよ、俺の車」

太陽の光に反射して、私達の姿を見事に映し出す白い美しいベンツ。
毎日、洗車してるのかと聞きたくなるような鮮やかなきらめいた白色。


「俺と里穂は、後ろ乗るな」
玲於は、何気なく言った。


えぇー
私、助手席?
ちょっと……
里穂、代わって…
とは言うものの、それは変か、やっぱり。


私は、心臓をバクバクさせながら、真っ白なベンツの助手席に乗り込んだ。


「さあ、出発だ」
翼がテンションを上げていく。
運転席に座った翼は一段とかっこよく見えた。

「わぁーい」
里穂は無邪気な声を出す。


私は……
「よろしくお願いします」
としか言えなかった。