ポカポカ陽気で、朝からの不快な気分が、少しずつ吹き飛んで行った。

私は、駅に向かって足早に歩いていた。

すると、私の目の前に突然、真っ白なものが現れた。


ん?
ベンツ?
翼?


「奏音、おはよう」
窓から、男らしい顔つきで白い歯を見せながら、翼は爽やかに言った。


「つ、翼、おはよう。どうしたの?」
高鳴る鼓動。


「家、この辺かなと思ってたら、たまたま見つけた。俺って強運だよな」


「そ、そうなんだ。びっくりしたぁ」


さっきまで、玲於と一緒だったなんて、いや、隣人になっちゃったなんて、口が裂けても言えない。


「乗れよ、送るよ」
翼は優しく言った。


「うん、ありがとう」
私は素直に甘えることにした。