私は一人暮らしをしているが、帰宅すると隣りの人が数日前に引っ越ししていたのを知った。

ほとんど挨拶程度だけで付き合いはなかったから、たいして気には止めなかった。



それにしても、今日は刺激的な一日だったなと心の底から思った。

何より、彼氏が出来た。
しかもイケメン。
ベンツ。
別荘。
ドキドキする黒眼鏡。





あ、ああ、あー忘れた。

仕事、何してるか聞くの忘れた。

金持ちって思い込むのまだまだ早いかも。




うーん、知りたい。

電話して、聞いちゃう?
いや、まだそんな勇気ない。



そんなことばかり考えていると、電話がなった。

ブルブルブル

里穂からだ。


「もしもし、里穂」

「もしもし、奏音、今日は良かったね」

「あ、あーありがとう。いいのかな、私」
ちょっと遠慮がちに里穂に聞いた。


「奏音、絶対捕まえてないとダメよ。こんなチャンスはそうはないから」


「ん?」
私は、なんだろうと不思議に少し思った。


「翼さ、国木田グループの御曹司なんだってー」
どうやら、玲於から聞いたらしく、かなり甲高い声を上げている。


「くに、くにきだ、あ、あの国木田グループ?ホテル、リゾート開発の?」
私は、背中に羽が生え天に上る気持ちになった。


「そう、そうなんだって…奏音、やったじゃない?」


「ど、どしよ、そんなすごい人……」


「私は全面的に奏音を応援するから。積極的に少しはなりなさいよ。じゃあ、またね」

里穂は、言いたいことだけ言うといつも素早く電話を切る。



国木田グループかぁー
これからどうなるんだろう?


私は、部屋の明かりを間接照明に切り替え、ソファーの下で、丸くなって色々考え出した。