「セシル嬢、今日もお美しいですね」
「ありがとう。聞き飽きたセリフだけど」
話しかけて来た男は私の返しに僅かに固まる。
だが直ぐに気を取り直して彼は優雅に微笑む。
「もしよろしければダンスのお相手をお願いできますか?」
私は100人居たら100人が「美しい」と褒めるような笑みを作り男を見る。
「よろしくしたくないのでご遠慮願うわ」


「聞きました、今のセリフ」
「ええ、しっかりと聞きましたわ」
「一体何様なのかしら」
「ちょっと美しいからって図に乗りすぎじゃありませんこと」

私の元から去って行く男を見つめるウザい女達がここぞとばかりに責め立てる。
と、言っても彼女達に直接私を害する勇気はない。
せいぜいできて遠巻きで似たような頭のレベルの女達とガチャガチャ言うだけだ。

私はそんな女達を見て鼻で笑ってやった。
すると女達は小説で良く見る「キーッ」と言って悔しがりながらハンカチを噛む馬鹿な女達と同じ顔をしていた。

本当にくだらない。
社交界というのはくだらない所だ。