俺の初恋は、皆より少し遅かった。

高校2年生の春、長い髪が桜と一緒に舞い上がった。その瞬間だった。

生きてきた16年間の中で1番美しいと思ったんだ。

後ろ姿を見ただけで、胸にあったささくれを引っ張られたみたいに、ジンジンと痛くなった。

「誰だ、アイツ」

気になった。名前を知りたくなった。声を聞きたくなった。

この時俺は、いつか彼女を見てしまった事に後悔するとは思ってもいなかっただろう。