小川莉花。高校1年生。真面目な学級委員長。
初めての恋をした。
いつからかは分からない。
話した言葉。表情。場所。時間。
それは全部思い出せる。





3年前。-5/1-

この日はオリエンテーション合宿のバスの席を決めていた。
「こいつはここでしょー」
「この子はここで〜」

人見知りだった私はその場を何となくやり過ごすつもりだった。

「ねぇ、小川さんは?どこにするの?」

こんな些細なことが私と彼 森河凛 の出会いだった。

「...え?
私は...余った所でいいよ」

「小川さんって優しいね」

「さっすが学級委員長!」

優しい。

優しいなんて初めて言われた。


だって、私は。

4年前-10/23-
「こっち来んじゃねーよ!ブース!」
「ジコチュー野郎はあっち行ってろよ!」

止まない悪口。

「ねぇ、あの子ってさ...」
「小川さんってわがままだよねー」

聞こえる陰口。

やめてよ。全部聞こえてるよ。
お願いだから...。




「...おーい...小川さーん...?」
「あっ、ごめん。
席決まった?」
「おう。
小川さん、通路挟んで隣は先生だけど良いのか?」
「うん。全然大丈夫」
「そっか。」



その日から何となく彼のことを意識するようになった。
彼の席は私の斜め前で、
人気者。

私と正反対の人だった。